by Utayo Furukuni | |||
vol.06 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
●レンタル屋 行ったら 必ず がっちり掴め! ジョバンニ君!かわいい!ギャオ〜ッ!(ジョバンニ君についてはEgo tripping' 「ジョバンニ・リビーシに夢中」コラム参照)などと言っていること自体、私はハリウッド・ムービー嗜好から程遠い位置にいるかもしれない。ありきたりの恋愛メロメロ・ドラマ(特にジェニファー・ロペスものは×)や、「アメリカは正義だ!」とわめく、勘違いなヒーローぶりっ子登場もの(たまにブラック・ジョークで面白い作品あり)、火薬バーン!自動車ボーン!ビルから飛び降りダーン!散弾銃ガガーン!のアクション映画(このジャンルにも傑作あり)には、私の身体を流れるブラッドくんが騒がないのだ。つまり、「熱い血潮が騒ぐ」の正反対。勿論、ハリウッド・ムービーだって素晴らしい作品はある。でも、そういった作品で「見てみよう」と思うのは、好きな俳優が出演しているか、試写会に当たった場合のみ。まぁ、何をどう間違えてか「超大作」(←だいたいがクラップ)映画も見るのだが…。 そして…、今までに高い金を払って見た史上最悪な映画は、アントニオ・バンデラス主演『13ウォーリアーズ』である…。場所はロンドン、ピカデリー・サーカスにそびえ立つヴァージン・シネマ。友人が誕生日で映画を見に行ったのだが、正直、見る前から見たくなかったのが心情…。(苦笑)だって、ラストが見えちゃう映画なんだもの。「迫力さえあればOK!」ってもんじゃないし。映画終了後、「金返せ!」と、握りこぶしでブルブル震えた。と言うか、自分の誕生日に、この映画(でも「ラテンの美男子」と形容詞されるバンデラス様が出演、そして迫力アクションのせいか、男女共に人気は高いみたい。好きな人にはたまん映画…)を選んだ友人に怒りすら感じたわ。センスが…ない! そんなこんなで、ビデオ・レンタル通いを続けた時期があった。なぜって日本は映画料金が高すぎる。レディース・デーと映画の日以外、大人1800円なんだから。そんな金銭的余裕はないっすよ。私のお気に入りビデオ屋は、レンタル料金「激安190円!」が魅力で、他店にはない珍しいビデオも置いてあった。だいたい、このご時世、DVDレンタルをしていないのだから。正真正銘のビデオ・レンタル屋!今はツタヤ・パワーに押されてか?その店はなくなってしまったが…。 前振りが長くなってしまった。今回は「レンタル屋 行ったら 必ず がっちり掴め!」と題し、オススメ映画をピックアップ。ほとんどが単館上映、もしくは日本未公開。最低の反対語は最高…。その最高な作品は、意外に身近にある!因みに今回は、原題も明記します。映画を語る上で、非常に重要な場合があるので…。 ●天才マックスの世界(原題:『RUSHMORE』) 大好きな映画の1本。監督のウェス・アンダーソンは、私の世代において最もリスペクトされるべき映画監督だろう。さて、この『天才マックスの世界』、日本語タイトルが最高に最悪!原題『RUSHMORE』こそ、この映画にとってコアな意味を含むのに、配給会社は何を考えているのだろう…。全く、映画の趣旨を分かってないじゃん…。おまけに、主人公のマックス・フィッシャー(ジェイソン・シュワルツマン)は天才でも何でもない。カソリック系エリート学校ラッシュモアに、奨学生として通いながら、勉強そっちのけで、幾つもの課外活動に打ち込んでいる。どちらかといえば、落ちこぼれ。全くもって、イメージからグ〜ンとかけ離れた、この邦題を考えた人の思考が知りたい…。 |
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この映画は、そんなマックスの日々を、オーバーリアクションなく、淡々と、しかし繊細に描いている。ラッシュモア校に地元の権威として、ハーマン・ブルーム(ビル・マレー)が演説に招かれるのだが、この演説(彼は生徒に「成功理論」を説いた。これが笑える!)に感動したマックスはブルームに、「今の演説は素晴らしかった」と伝える。これをきっかけに、2人の友情は徐々に育まれていく。しかし、学校に来た新しい先生、ローズマリー・クロス(オリヴィア・ウィリアムス)にマックスが一目惚れ。マックスは自分も苦手なラテン語授業撤廃を署名運動で勝ち取ったが、ローズマリーから「いかにラテン語は素晴らしいか」を説かれ、彼女を喜ばせたく、今度はラテン語授業復活を署名運動で勝ち取る。(笑)また、彼女の亡くなった夫が海洋学者であったことを知ると、ハーマンに援助を申し込み、学校内に水族館の建設計画を立てる。そんなマックスの真っ直ぐでピュア思いに、ハーマンとローズマリーは、振り回されながらも影響されていく。しかし、マックスとハーマンのユニークな友情も、微妙にぎくしゃくとしたものに…。それは、マックスの為に、恋のキューピットを買って出たハーマンも、ローズマリーに恋心を抱いてしまうからだ。恋のライバルとなった2人の、呆れるほど子供じみたやり取りがいい。奇妙でアンバランスな三角関係、可笑しいながらも、少しドロドロめいて、それぞれが持つ孤独感が映像に美しく醸し出されている。 |
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マックスは課外活動ばかりに打ち込み過ぎたせいで(と言うか、勉強は嫌いなんだろうなぁ)成績不振に陥り、校長先生から最後通告、ラッシュモア校を退学となる。そんなマックス、転校先の公立高校ではラッシュモア校の制服を着て自己紹介をするのだが、これがまた彼らしい自己主張。慣れない公立学校での不安を抱えながらも、これまた課外活動に打ち込むマックスの姿勢は、強烈に、昔の自分を思い起させた。それにしても学制服って、何とも不思議な魅力がある。10代の代名詞というか…。マックスはここでも問題を起こし(やはり!)、停学処分になり、その後、学校に行かなくなってしまう。マックスの父親、バート・フィッシャー(セイモア・カッセル)が営んでいる散髪屋を手伝いながら、ラッシュモア校の思い出に浸るマックス。そんな彼を優しく見守る公立学校の同級生マーガレット。中国系アメリカ人のマーガレットは、マックスを元気づけようと、小さな植物を渡す為、彼の家に行くのだが、このシーンは思春期独特の感性というか、ジーンとしちゃいました。理解するには少し難しいマックスの言動と行動、しかし、ハーマン筆頭に、彼の存在は膨らんでいくばかり。ラッシュモア校で唯一の友人であったアレックスと凧を飛ばしていると、そこへラジコン・ヘリコプターを飛ばすマーガレットの姿があった。マックスはマーガレットとアレックスとの触れ合いを機に、公立学校に戻って、舞台演劇に専念することとなる…。 |
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『RUSHMORE』はセリフがウィットに富んでおり、何とも言えぬ味わいを残している。その脚本は監督のウェス・アンダーソンとオーウェン・ウィルソンが担当。因みにオーウェンの弟、ルーク・オーウェンも医者役で出演。この繋がりは強い!ウェス・アンダーソンの初監督作品『Bottle
Rocket』(ここでもオーウェン&ルーク・ウィルソン兄弟が主演!)は日本未公開で未発売。カルト映画で根強い人気があるらしいので、ぜひ日本でもDVD発売切望!そしてこの映画、音楽が素晴らしい。マックスとハーマンがジョギングをしているシーンには、ジョン・レノンの『Oh
Yoko』がBGM、はしゃぐ2人が微笑ましい。キンクスの『Nothing In This World
Can Stop MeWorrin' Bout That Girl』には、あまりのグッド・チョイス振りに眩暈が…。名曲!ソフィア・コッポラは『RUSHMORE』でハーマン役を演じたビル・マレーを見て、『Lost
In Translation』の主役を依頼したのは有名だが、彼を念頭に脚本を書き上げたというのだから、相当入れ込んだに違いない。確かに、ローズマリーとの関係が見つかり、妻と離婚(これはマックスが恋いがたきとなったハーマンの妻に暴露する)、そしてローズマリーとも距離が出来てしまったハーマンが、マックスの父の床屋に行き、整髪してもらうシーンの表情、そして、ボロボロの姿で酔っ払いながら病院に現れた表情、もう何とも言えず哀愁を漂わせた雰囲気、ソフィア・コッポラをノックアウトしただけのことはある。 |
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何でこうも『RUSHMORE』に感情移入したかというと、私も高校時代、映画研究部、演劇部、新聞部など、幾つか課外活動を掛け持ちしていた。おまけに、演劇部(名前だけ)にも所属して、演ずる立場ではなく、舞台脚本を書いていた。それを発表したかどうか、今となっては全く思い出せない。何となく思い出せるのは…、舞台係と喧嘩したことくらい。(苦笑)そしてマックス同様、先生に恋をしていた。英語教師。この先生、剣道部の顧問で、まぁ、フツーにかっこよかった。が、酒が入ると人が変わるんだろう。飲酒運転で事故ってしまい、懲戒免職。なんとなく、手紙を出してみた。すると、私の苦手な前置詞を「こうやって克服しなさい」と、手紙の切れ端が添えてあった。 おっと、今回は、あまりに『RUSHMORE』に文字を割いてしまった。次回は、作品をピックアップして、コメントしたく思います。 |
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2004-11-08 |
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