by Utayo Furukuni
vol.10
 

●Lost in Translation 東京だべぇ〜 (後編)



「のっぽん」と別れを告げ、我ら一行は、ゆりかもめに乗るため新橋駅へ。このゆりかもめ、海外でも結構知られている模様。ガイドブックにも掲載されているのね。私もまだ3回しか乗ったことがないが、ともかく運賃がバカ高い!お台場にあるライヴハウス「ゼップ東京」に行く際、利用せざる得ないのだが、頼むから乗車賃下げてくれ。だから第3セクターが関与する電車は嫌いなんだ。だが、ゆりかもめ各駅は、さすがにフューチャリスティックでアート性は十分。駅構内もなんだか巨大虫がとり憑く、SF映画みたいなのだ。お台場に向かう途中、湾岸線高速道路と平行して走り、もう、信じられないくらいアトラクション的乗り物!イメージは『ブレードランナー』でっせ!おまけに、近くは東京湾、少し遠くに羽田空港が見え、これは、他都市にはない風景に思う。でもお台場駅を降りると、正直、全てに幻滅するんだけど。やはり安っぽい観光エリアにしか見えない自分がいる。だって、縮小版「自由の女神」に、人工海、ショッピング・モール、フジテレビなわけで…。私には何のアピールもない。


そしてアメリカンとケンは、インターネットで調べて、「お台場にはリトル香港がある!」と言うので、あちこち探していたが、なんとそれはチャイニーズ・レストランの名前であった…。何なんだ!このオチは!あたしも、縮小版「自由の女神」があるくらいだから、人工島でリトル香港があるのかと思ったさ…。もしやお上りさんはあたしかい?一気に疲れが生じたわ…。リトル香港のバカ!


その後、私はサンボマスターのライヴがあり、一行と別れた。


翌日、私は仕事を早々に引き上げ、上野公園に向かった。「皆で花見をしよう!」と、私が提案したのだ。桜咲く時期、上野公園はすごい人で賑わうが、これもまた東京見物!彼たちも楽しみにしていた。が、花見情報を調べなかった私もいけなかったのだが、上野公園内の夜桜見物は20時迄で、時間になるとぼんぼりが一斉に消えるらしい。我々が座れる場所を探していると、親切?な下町おばさんにどやされた。「あんたたち、あと15分でぼんぼりが消えるんだから、さっさと座って、お酒飲むなり、食べ物食べるなりしなさいよっ!」 …。 ごもっとも。そのおばさんたちの言葉に従い、桜を楽しむというより、夢中で食い気に走ったわ。って言うか公園管理局もこの時期くらい大目に見てよ。でも実際は、20時ちょい過ぎまで、ぼんぼりは消えなかった(気がした)…。


その後、不忍池方面に向かい、途中、屋台で再び腹ごしらえ。こちらは夜遅くまで「飲みねぇ!喰いねぇ!」で、賑わっていた。桜のすぐ下にはベンチがあり、風情たっぷり。「最初からこっちに来れば良かった…」そう皆が思ったに違いない。皆さん〜、本当に申し訳ない。そんな日本の春に浸っていたアメリカンとケン、時間も遅くなったので、「これで今日はお開きだ…」と思っていたら、「カラオケ!」という言葉が飛び交った…。おお、日本の文化カラオケ。知り合いが知り合いに連絡を取り、ウィルスの如く人数増殖、私は引率の先生よろしく、これら暴れん坊ロディオ軍団たちを面倒みなければならなかった。お前ら!自分の飲み物くらい、自分で注文せい!あたしが入れたウィーザーの『バディ・ホリー』をマイク取って歌うな!あたしゃコーラスだけかい!バンクーバ出身君よ、頑張って日本語で『ドラえもんの歌』を歌うなら、せめて音程だけは合わせてくれ!オハイオ出身君よ、マラカスは振るもんであって、壊すもんじゃないんだよ!飲み物にじゃりが入ったじゃないか!そんなジャングル化した和風の部屋で、我々は朝5時までカラオケ三昧となった…。アメリカン曰く「カラオケはすごくやりたかったんだ。ほら、『ロスト・イン・トランスレーション』で、ビル・マレーがカラオケをするシーンがあるだろ。これと同じ体験をしたくてさ。でもカラオケは面白いよ」 … そうねエンジョイしたと思うわ。だってアメリカン、ケンと一緒にカイリー・ミノーグ熱唱してたもんね。それにしても、日本に来る外国人の中には、この映画に影響されている人も多いのか。そういや聞いた話では、「ロスト・イン・トランスレーションごっこ」を体験したく、一人ふらりと東京に来る外国人もいるらしい。それが出来ちゃう東京もすごいと思うが、映画は映画で、現実は違うのになぁ。勿論、アメリカンやケンのように、クリエーターであればあるほど、『ロスト・イン・トランスレーション』の疑似体験をしたがる人も多いのかもしれないが。これは私の感想。


彼たちと過ごした2日間は、私にとってもロスト・イン・トランスレーションであった。普段行かない街を、知り合ってまもない人たちと巡る…。街を歩き、観察する楽しみや新発見をして、興味ある全てのことを受け入れた彼たちとの会話は、本当にインスパイアされるものだった。その国に興味を持つことって意外と難しいことだけど、彼たちはハード・スケージュールの中、それぞれのインスピレーションを東京で見つけただろう。ゲーム業界なんて言うと、「おたく!秋葉原!」のイメージが先行しているが(←これ、あくまでも一般論ですよ!)、ゲーム制作に実際携わっている人たちって、かっこいいですよ!ケミカル・ジーンズなんてはいてません!どでかいバッグなんて持ってません!(←思うに、こういう人たちは、ゲームプレスに多いはず!)別におたくが悪いというのではなく、何かをクリエイトする人たちは、自分というものをある程度知っていますから。それだけにのめり込むのではなく、広い興味で世の中を見ている。私にはそれが、クールに映った。


で、私はまだ『ロスト・イン・トランスレーション』見てません…。


2005-05-07




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