White Stripes
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Shibuya AX
2003年10月22日
古國 宴代  Utayo Furukuni
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ホワイト・ストライプスのジャパン・ツアー全日程に、サポート・アクトとしてオープニングを飾ったワールウィンド・ヒートWhirlwind Heat(このバンド名は、ソニック・ユースのアルバム『Goo』のジャケットから名づけたという)は、ステージにブリーフ姿(腹には日の丸と、日本語が書かれた手ぬぐいを巻いていた)という出で立ちで登場。一体、誰のアイデアだろう…。

彼たちに囲まれたホワイト・ストライプスのドラマー、メグ・ホワイトがウサギの着ぐるみを着て、バンドを紹介した。「あれはフレーミング・リップスからのプレゼントかしら?」と思ったが(笑)、メグ曰く「東急ハンズで買ったのよ!」と言うことだ。何ともキュートなピュア・ホワイトうさぎ!
ちなみに、「何故うさぎか?」というのは、ワールウィンド・ヒートのファースト・アルバム『Do Rabbits Wonder?』(日本盤タイトルは『ウサギの悩み』)からのインスピレーションだと思われる。

ワールウィンド・ヒートは、ベースのスティーヴ・ダムストラ、ドラムのブラッド・ホランド、そしてシンガー/キーボードのデイヴィッド・スワンソンというトリオ構成。
インプロヴィゼーション的な演奏といい、ムーグ音響といい、ジャック・ホワイトが自らプロデューサーを買って出たのも理解出来る実験的ノイズ・ロックだ。ライヴが、カオス展開になるのも、想像がつくかと思う。
何よりも個人的に「やられた…」と感じたのは、ライヴ後半、スティーヴのベース弦が一本切れ、シンガーのディヴィッドが「俺たち、(ベースの)スペアを持っていないから、このまま演奏するよ」と、動揺もせず、MCを入れた瞬間。たいていのバンドは、スペアを用意しているのだろうが、諸事情ゆえのライヴ進行に、にやりとなったのも、私だけではあるまい。

ワールウィンド・ヒートがステージを去ると、オーディエンスがひしめき合い、前へ前へと押し寄せてきた。ヴェニューを見渡すと、今日のギグは外国人比率が非常に高い!というのが感想。アメリカやイギリスでは、渋谷AXクラスのキャパシティーで見ることが不可能なほど、大人気のホワイト・ストライプス。それを考えると、外国人比率が高いのも頷ける。ライヴが始まる前から、ノリノリだったのも彼たちであった。2階席にいた、外国人おっちゃんは、BGMにストゥージズの『1970』が流れると、いてもたってもいられなくなったのか、前方に来て、踊りながらオーディエンスを挑発!それを見た同胞は、笑いながら拍手を送っていた。セキュリティーから「止めるように」と言われたのか、すぐ後ろに引っ込んでしまったが…。う〜ん、彼はデトロイト(もしくはミシガン州?)出身だったのだろうか?実際、私も『1970』のBGMには、かなり敏感に反応して、年齢を感じたのも事実である…。

デトロイトな気分に浸っていると、20時20分過ぎに、ホワイト・ストライプスが登場した。真っ黒な髪に対比した、ジャックの青白いフェイスが、とかく印象的だ。彼たちのライヴは、去年のフジロック以来である。久々の興奮は、2曲目『Dead Leaves and the Dirty Ground』がプレイされると、ウォーミング・アップはもう終了、全身はスイッチ・オンとなった。

バート・バカラックのカヴァー『I Just Don't Know What To Do With Myself』は、スタンダード・ナンバー。懐かしいメロディーは、ジャックのヴォイスにかかると、アグレッシヴでソウルフルに聴こえるから不思議である。初期ナンバー『Astro』のブルージーなギター・リフに惚れ惚れし、キャッチーでテンポの速い『Hotel Yorba』では、オーディエンスが大合唱。何度、彼たちのライヴを見ても、この曲では盛りあがる。

ライヴ後半、ジャックが「この曲はエリオット・スミスに捧げます」というMCで始まった『We Are Going To Be Friend』。その時、エリオット・スミスの死を知らなかった私は、ただ純粋に、彼たちには交友関係があるのだと信じていた。真実は、このライヴ直後に知ったのであるが、スローにアレンジされたこの曲の深みを、今更ながら噛み締めている。

アンコールを含めラスト・ソングは『Seven Nation Army』。強烈なインパクトのギター・リフで始まるこの曲は、オーディエンスを熱狂的に引き込み、ショーのエンディングへと導いた。

ブルース色の強い、ホワイト・ストライプスの音楽/ライヴは、ジャックが本能的にギターを掻き鳴らすインテンスなプレイ(延々とブルースをプレイするジャックも最高!)、そこにメグのミニマルなドラム・サウンドがパーフェクトにマッチしているコンビネーション、これこそが彼たちの素晴らしき魔法だろう。今度は、酔いどれバーフライな奴らが集う、小さなヴェニューで見たい!何て思うのは、余りにふとどきだろうか?

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