Films index2
directed by Todd Phillips
2004年3月5日全米公開
by  Utayo Furukuni
Ben Stiller and Owen Wilson as Starsky and Hutch


Captain America and Billy?




スタスキー&ハッチ…。この名で反応する人は、70年代の伝説テレビシリーズ『刑事スタスキー&ハッチ』にしびれていたのではないか?かくいう私も、その一人!と強くは言えないものの、再放送で見た記憶あり。正直、ドラマの内容は覚えていない。(笑)テレビシリーズの二人は濃かったですなぁ〜。あの頃のアメリカのテレビシリーズって、若者にクールとは何ぞや?を最大限にアピールしていたりして。今夏、サマーソニックでトリを飾るビースティー・ボーイズも傑作アルバム『イル・コミュニケーション』の収録曲『サボタージュ』で、スタスキー&ハッチを気取ったミュージックビデオをつくり(監督は言わずもがなスパイク・ジョーンズ)、あの頃の雰囲気をモロ、画面一杯に爆発させていた。


そういや、2人のはちゃめちゃ刑事コンビが繰りなす日本のドラマって、うちら世代にとっては『トミーとマツ』だったのだ!と今更ながら思う。クールさは似ても似つかないけど、『トミーとマツ』って、もしや『刑事スタスキー&ハッチ』がベースなのだろうか?(苦笑)で、私はどっち派?と考えたら…、トミー派だったのかも…。


さて、ベン・スティラーと、オーウェイン・ウィルソンによる映画『スタスキー&
ハッチ』だ。ネタばれ含みますので、もし、詳細を知りたくない方は、レビューを読む前に映画を見てくだされ! 


-left to right-
Ben Stiller,
David Soul(original Hutch),
Paul Michael Glaser (original Starsky)
and Owen Wilsonwith original Starsky and Hutch


麻薬密売人、リース・フェルドマン(ヴィンス・ヴォーン)と愛人キティ(ジュリエット・ルイス)が豪華ヨットで日焼け止めヌリヌリ戯れている時、部下であるテレンス・メイヤーズが起こした不始末を知る。温厚に許すフリをして、拳銃でテレンスを冷酷に殺し、海に投げ込むリース。映画のストーリーはここから始まる。それにしても、ジュリエット・ルイスは、最近パッとしない。いつも、頭の悪いビッチ役というか、おぽんちビンボーな女性役ばかりで、何だかなぁ〜って感じ。(苦笑)一応、演技派女優だったハズ…。


一方、ベイシティー警察署では、真面目なデイヴィッド・スタスキー(ベン・スティラー)と、いい加減なケン・ハッチェンソン、通称ハッチ(オーウェイン・ウィルソン)が仕事のヤマで共にドジってしまい、警察主任ドビーから、大目玉を喰わされる。ハッチはおとり捜査で勝手に行動(おまけに犯人のお金をネコババ)、スタスキーは真面目一点張りで、チンケな犯罪でも、アクションスター並に、ど派手な逮捕劇を繰り返す。スタスキーの母は凄腕刑事だったようで、生涯22年間、たった一人の相棒と組み殉死した。スタスキーはそんな母を思いながらも、本心から信じあえる相棒ができない。何せ4年間で12人もパートナーと喧嘩別れ。署長も頭を悩ませていたが、性格正反対の2人がコンビを組めば、調和が取れるハズ!と考え、コンビ命令を出した。


ハッチの刑事らしからぬレイドバックな態度に、スタスキーは苛々しながらも、コンビとして仕事を開始。まずはハッチが信頼を置いている、情報屋ハギー・ベア(スヌープ・ドッグ)に、スタスキーを紹介する。ここでも、スタスキーの真面目一直線がアダとなり、ハギー・ベアのペット、イグアナのしっぽを拳銃で落ち落としてしまう。(笑)恐怖で固まるスタスキーを、ハギーは寛容に「まぁ、いいさ。イグアナのしっぽは、また生える…」と言うのには笑った。 


スタスキーはこれまた真面目な性格からか、朝もはよから警察署に赴きデスク・ワーク。一方ハッチは、モーニング・コーヒー片手にのんびりと、10時出署で大遅刻。スタスキーは、精一杯の嫌味をハッチに言うが、ハッチには痛くもかゆくもない。どこまでもマイペースな男。B型か?さて、覆面刑事として外に出て、ベイシティ界隈を巡回する2人。ここで、笑えるのは、スタスキーの愛車は1974年型フォード・グラン・トリノにあるのに対し、ハッチはおんぼろキャンピング・カー!何とまぁ、スタスキーの派手な愛車!スタスキーは愛車トリノに乗ると人格が変わるのか?スタントまがいの運転を披露し、ハッチを驚かす。しかし、スタスキーは愛車トリノに乗る際の注意を、ハッチに特別忠告。車内にはコーヒーのシミをつけない、車内でコーヒーを飲まない、トリノは自分以外、運転禁止!そう忠告されたそばから、飲んでいたコーヒーを、トリノのルーフに置いちゃう、ハッチのおちゃめなこと!


巡回をしていると、早速、署からの無線が入る。海岸に死体が浮かんでいると言う。現場に急行するスタスキーとハッチ。そう、その死体こそ、リースの殺したテレンス・メイヤーズであった。そのテレンスが着ていたジャケットのポケットから、リース・フェルドマン社という名刺が見つかる。ここでもハッチ、やってくれます。名刺を見つけただけでなく、現金も見つけ、スタスキーのいない隙を狙いネコババ。(笑)近所の男の子にお金を借りており、期限まで返さねばならなかったのだ。(笑)そんな2人は事情聴取の為に、リースがいる自宅へと赴く。スタスキーの質問を、なんなくとはぐらかすリース。うさん臭いヤツだ。しかし、ハッチは、居間に飾ってある豪華ヨットに目を向けていた。いいぞ、ハッチ!意外に勘は鋭いぞ?


殺人事件捜査で、関係者の情報を集める2人は、フットボールを応援する、チアガールの練習場へ。「何故、ここなんだ?」と思ったが(苦笑)、キュートな2人のチアガール、ステイシーとホーリーから、チアリーダーであるへザーがテレンスと付き合っていた情報をゲット。早速、へザーに話を聞きに行く。それにしても、へザーよ、刑事を目の前にして、着替えながらの事情聴取なんて、過剰大サービスだわ!(笑)すっぽんぽんだもんなぁ。ナイス・バディ!ここで、テレンスの着ていた刺繍入りのジャケットをへザーから受け取り、更に捜査に勤しむスタスキーとハッチ。


 
さて、リースだが、表向きは事業を装う金持ちビジネスマン、しかし、その実態や、嗅覚の鋭い犬に匂いを嗅がせても、決して気づかれないコカイン精製に成功。これを売りさばく為に、ベイシティで取引が行なわれようとしていたのだ。そういったコカインが存在することを、スタスキーとハッチはハギー・ベアから聞きつける。(しかし、黒幕が誰であるかはハギー・ベアも知らない)2人が刺繍入りのジャケットをハギーに見せると、「バイク野郎が集まるバイカー・バーのマスター、ビック・アールが何か知っているかもしれない」と告げ、愛車リンカーン・コンチネンタル76で颯爽と走り去る。いやぁ〜、スヌープ・ドッグことハギー・ベア、スラリと背も高く、めちゃくちゃサイケな衣装に身を包み、マジにイカしていました!


ここからです。ケラケラ大爆笑してしまうのは!だってバイカー・バーに行くのに、スタスキーとハッチ、イージーライダーのパクリ格好、まんまなんだもの。スタスキーがデニス・ホッパー、ハッチがピーター・フォンダ。これまた2人ともそっくり!おまけにBGMがザ・バンドの『ザ・ウェイト』。いいですね〜。さて、お目当てのバイカー・バーに行くものの、仲間意識の強い連中から、よそ者扱いされ、スタスキーは付け髭を見破られ(笑)、ちょっとした乱闘が起こってしまう。しかし、スタスキーがキレたら最後(かなりヤバイ)、「ビック・アールは服役中だ」と、ようやく代理マスターに聞きだすことに成功した。


このビック・アール(ウィル・フェレルが演じている。『サタデー・ナイト・ライヴ』でも名の知れたコメディアン。昨年末には『ELF』という映画で、アメリカで旋風を起こした。日本未公開。何でっすか!)ゲイなんですね〜。(笑)もう、仕草がゲイ!ウィル・フェレル、上手すぎるぜぃ!ガラス越しからハッチを見つめる目つきが、もういやらしいのなんの。(笑)情報を提供するかわりに、ハッチにおへそを見せてとか、後ろ向きになって、ドラゴンのように「ガオーッ!」とこっちを見てとか、もう、ゲイ・オマージュ最高!しかしビック・アール、それでも納得しなかったようで、最後にはスタスキーとハッチを馬乗りにさせて変態プレイ。このプレイが効果を見せたのか?ようやくコカイン1袋を手に入れた。しかし…、この面接室プレイは刑務所内でビデオを撮られていたのだ…。ここのシーンは、腹抱えて笑っちゃいました。もう、オーウェンの甘い笑顔が、これまたばっちり、ゲイ好み!こりゃ、ゲイ諸君は参りまっせ。ヒッヒッ!


署に戻ると、このプレイを太っちょ同僚(クリス・ペンです!)に笑われ、おまけに、あれだけ苦労をして手に入れたコカインが、人工甘味料だと言われ、さんざんな目にあう。ドビー主任は勿論、大激怒。しかし、しょげてばかりはいられない。チアガールの2人、ステイシーとホーリーがスタスキーの家に遊びに来て、パーティ・ナイト!まぁ、ダブルデートってやつです。


ディナーを済ませ、コーヒーを飲もうとしたスタスキーは、砂糖が切れていることに気づく。そこで、人工甘味料だと笑われたコカインを、砂糖代わりにコーヒーに入れて飲むと、突然ハイになってしまう。超ハイになったスタスキーは、「クラブに行こう!」と言い出した。クラブではエキサイトしまくり、挙句の果てに、常連客のダンサーとダンス・バトルを繰り広げる羽目に。


ここで注目は、このダンサー、ハー・マー・スーパスターというミュージシャンなのだ!音楽好きなら、もう聞いたことのある名前でしょう!変態チックなパフォーマンスが、イギリス、アメリカで受けてマス。それだけで、私は息が切れるほど笑ってしまった…。だって、ダンスはそんな上手くないんだもの!ダンス・バトルには負け、納得いかず帰宅したスタスキーは、そのままバタンキューと寝てしまう。ハッチは、「何かがおかしい…」と思い、残りの人工甘味料をステイシーとホーリーにも飲ませ、ハイになる二人と、あらららのら〜と、男ならうれしい一夜。何て、抜け目のないヤツ!


翌日、それは人工甘味料なんかではなく、新種のコカインと判明。それを知ったことで、スタスキーとハッチは命を狙われることになる。スタスキーの愛車トリノが銃撃され、犯人のナンバープレートから、韓国人、チョウを逮捕。なかなか自白しないチョウに、ハッチは韓国語で優しく話しかける。(何で話せるんだ?)そんなハッチに心を許したせいか、チョウは自分を雇ったのは、豪華ヨットに乗っていた男だと言う。スタスキーとハッチは、ここで黒幕が誰であるかピン!とくるのであった。


ここからは、スタスキーとハッチが命を懸けての、極悪人リース逮捕大作戦が始まる。ドジってばかりの2人のやり取りが、とにかく笑える。失敗の連続で、けんかをしては離れ離れになり、だが、お互いの信頼がいかに強いものになったか、なくてはならない存在か、心から確信するのであった。これもある意味、ゲイ・オマージュである。スタスキーは、女よりもハッチが気になって仕方なくなるのだから。海辺を走るスタスキーの空想シーンは…、愛を感じました。(笑)

 
一度、潜入捜査に失敗した2人は、情報屋のハギー・ベアに協力を要請。リースと秘書がゴルフをプレイしに行くのを狙い、ハギー・ベアには、キャディーに扮装してもらう。全くゴルフに無縁である私は、アイアンだの、うんだの言われても知らんのだが、このハギー・ベアもプロ・キャディではない。見当違いのゴルフ・グラブをリースに渡し、罵られるハギー・ベア。し〜かし!恐るべしハギー・ベア!彼は淡々と、ゴルフ場の草を分析した結果、リースにこのゴルフグラブを渡したんだ!と主張。リースは疑いながらも、それを使うと、ゴルフボールが、遠くまで飛ぶのなんの。ここでハギー・ベアは「おれはグラス(Grass)については詳しいんだ」と言う。お分かりですかな?つまり、このグラスとは、ハッパ、マリファナのことなんですね〜。こんなところで大笑いしたのは、会場、私一人で、結構、ビビっちゃいました。(苦笑)


リースとドラッグディーラーたちとの接点はいかに?ベイシティのどこで、新種コカインの取引がされるのか?果たして、スタスキーとハッチは、無事にリースを逮捕して、これまでの汚名挽回をすることができるのか?ここからは、エンディングなので、皆さんの想像にお任せしよう!とりあえず、アクション&コメディ映画なので、やっぱりスカッとハツラツ、オロナミンC的に、笑わせてくれます。




ストーリーは正直、ありがちであったが、この俳優2人を組ませたのは大正解。プライベートでも仲良く、映画制作も一緒につるんでいるらしい。元々、ベン・スティラーは好きだったのだが、私、この映画でオーウェン・ウィルソンという俳優の魅力をきちんと理解しました。彼の、ぽわ〜んとした笑顔と、どこかクセのある話し方、好きですね。自然体の演技も良かったし、やっぱり才能があるのでしょう。(何せ『天才マックスの世界』では脚本をウェス・アンダーソンと共作。おまけにテキサス大学で2人はルームメイトだったというのだから凄いわ!そして俳優、ルーク・ウィルソンは兄弟です)


映画『スタスキー&ハッチ』は、時代背景を分かっていれば、更に面白く見れる作品だと思う。70年代ファッションも再現され、ハッチ愛用のスタジャンなんて、意外にクールだったりして。この作品、日本ではまだ公開が未定である。配給会社もどうなるやら。なので、タイトルもアメリカ同様『スタスキー&ハッチ』でいくのか、それともテレビシリーズのタイトル『刑事スタスキー&ハッチ』にするのか、それさえ分からない。が、最後は往年のテレビファンにも、たっぷり大サービスもあるので、年齢問わず楽しめる作品であろう。ゲイ・カルチャーに抵抗がなければ、より楽しめます!(断言)


最後に、スラング英語の日本語訳には、ちょっぴり不満。ストレートに訳しちゃってもいいじゃん!なんて思ったのは、私だけだろうか?リサーチ会社主催の試写会だったので、アンケート調査は、びっしりと質問の山でござんした…。


2004-06-12
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