Films
directed by Danny Boyle
2002年11月1日イギリス公開

by  Jasmin & ise


☆結末に関するコメントを含んでいます。


Jasmin: 動物の権利を守ろうとする活動家たちが、研究所から「ウィルス」に感染したサルを解き放ってしまう。ウィルスは爆発的に拡大し、さて28日後・・・病院で昏睡から目覚めた主人公の青年は何を見るか・・・?というストーリーね。イギリスでは去年11月に公開されたよ。ダニー・ボイル監督、脚本はアレックス・ガーランド、話題になったよ。ま、賛否ありましたが(笑)。


ise: 私は前知識ほとんどなしで見た。
イギリス議会を背に、呆然とした表情の不精ひげのサル男。舞台はロンドン。となれば見なくちゃいかんだろう。なつかしいストリート風景を見たい。むしょうにイギリス英語を聞きたくなったのが動機。



Jas: ワタシの英語聞いてるじゃない?


ise: あんたのはナマってるんざます(笑)。
デジタル撮影がチャチだとか、ストーリーはありきたりで先が読めてしまうとか、新しさは何もないとか、後から読んだモノに書かれているけど、とてもおもしろかった。


Jas: 最初の研究所のシーンで、チンパンジーが実験されているところね。チンパンジーがベッドにしばりつけられいて、ぐるりとモニターに囲まれている。見えるのはモニターの映像のみ。その映像がすべて暴力シーン。これはちょっと考えた。あのチンパンジーはワタシたちでありワタシたちの子供たちなんだと。毎日こんなシーン見て育った子供たちが影響受けないわけないものね。


ise: 暴力シーンを見ている子供がすべて暴力的になるわけじゃないけど、絶対数は増えそう。自分の中で許容され、既成事実として蓄積されていく。それがこわい。
ケンブリッジの研究員が「何に感染してるんだ」と聞かれて「rage」と答えるよね。あそこは緊張した。どんな病名が出てくるんだろうって。そしたら「rage」ときたから、うーんとうなってしまった。うまいって思って。



Jas: このウィルスを「rage」と定義したことでわかりやすくなったね。見知らぬウィルスじゃなくて、「rage」は誰もが内に秘めている要素だから・・・。コワイのはその感情が伝染するってことね。怒りや悲しみ、喜びを「共有する」ってよく肯定的に使われるけど、この映画を見たら、それが恐くなってくる(笑)。活動家たちが動物を逃がすシーンで思い出すのはモリッシーの「インタレスティング・ドラッグ」。実験用ラボのウサギを解放するシーンがあったけれど、事態はあれほど無邪気で単純じゃないんだ、ということね。


ise: ジムが入院してたのはテムズ南岸、たぶんサザックにある病院だよね。ロンドンから人がいなくなればこんな景色なのか、と思いながら、観光案内ビデオみたいにロケ場を確認してた(笑)。病院を出て、ロンドン・ブリッジを渡りシティへ。ロイヤル・エクスチェンジの前を通り、クイーン・ヴィクトリア通りを抜け北上、フリート街、ストランドを経てもう一度ウォータールー橋を渡ってサウスへ。そしてウェストミンスター橋を渡る。このとき左手に例のイギリス議会が見えるんだよね。


Jas: そうそう。そのままホワイト・ホールを北上、ふだんは立ち入り禁止のホースガーズに入りこんだりしながらヘイマーケット、ピカデリーへ。ピカデリーサーカスのエロス像を囲む塀には人々の安否情報がびっしりと貼られている。シャフツベリー・アヴェニューを上がり、チャリング・クロスを北へ、センターポイントにたどり着く。その間に、市民が集団で海外脱出したこと、各地で暴動、騒乱が起こったこと、新聞の切れ端などから主人公は事態をおぼろげながら知っていく。しかしなぜ…?


ise: これがアメリカ映画なら、ジムはまず情報を得ようとするよね。ネットがだめだから、新聞・雑誌をあさってさ。いったい何が起こってどうなってるのか?ところがジムは人とのコンタクトを求めて「ハロー」って呼びかけながら街をさまよう。あまりにも無防備(笑)。普通身を守る棒くらい持つと思うのに、彼はペプシを入れたスーパーのビニール袋を下げているだけ。それが日常生活のリアリティを生むんだろうけど(笑)。優しい両親に育てられたごく普通の青年なんだろうね。


Jas: たぶん小さい頃には教会にも通って…。その教会がゾンビの巣窟でまるで「人民寺院」の集団自殺現場…。ようやく目にした人間がゾンビと化した神父さま。


ise: 以後は緊張の連続(笑)。だって「感染者」がいつ襲ってくるかわからないんだから。来るぞ、来るぞ、来るぞ、来たーっ!!て。自分だったら、セリーナが宣言したように、自分が生き残るために、誰であろうと感染したものはたちどころに、躊躇なく殺すことができるかな、と終始考えながら見てた。そうしなければ自分が殺される、という状況の中でね。


Jas: ジムはバットで身を守ってたでしょう。これがアメリカなら、まず銃を手に入れようとするだろうし、最初に感染がひろまったときの人々の反応はもっと違ってただろうなと思った。


ise: 逆に感染者が銃を撃ちまくったかもしれないよ。


Jas: 銃を撃つにはある意味冷たい知性が必要だから、感染者は銃を制御できないと思う。


ise: でもピストルで2,3発撃ったくらいじゃ死なないんだから結局銃じゃだめだよ。自分の苦痛も感じないくらいのレベルなんだもん。全身火まみれでも襲ってくるんだから。


Jas: 楽しいシーンは(笑)?


ise: ジムとセリーナ、フランクと彼の娘、ハナがマンチェスターへ行くところ好き。無人の食料品店に入りこんで、好きなものをカートに投げ入れて…。あれって願望だよ(笑)。そのあとキャブに食料を山ほど積んでM1を北上していく。「♪この道はいつか通った道〜」。マンチェスター、シェフィールド、北部でのライブに行くときにはあの道をコーチで行ったものです、はい。


Jas: はいはい…(笑)。この映画を「地獄の黙示録」のモティーフを借りていると指摘する人もいるね。川をさかのぼるかわりに、M1をさかのぼっていくわけ。その先にある何かをめざしてね。「地獄の黙示録」のキーワードは「horror」だったけど、この映画は「rage」ね。途中みんなでピクニックのような平和なひとときをすごすでしょう。人がいなくなった馬場で馬だけが駆けてるシーンがあって、フランク父さんが美しい…としみじみ言うでしょ。あそこは本当にきれいでした。


ise: あんたは馬好きだからね。そのフランク父さんも思いがけなく感染してしまう(泣)。そのあとやっと軍の封鎖隊の生き残りと合流。そしてあらわれた隊長の少佐が、なんとクリストファー・エクルストン!


Jas: 出たー!!


ise: 彼が出てるとは知らなかった!金髪に染めちゃって、軍服似合う!野戦服も正装もカッコいい!不思議に今回はナマリが全くない!


Jas: イギリスの俳優はたいてい発音の使い分けできます。彼の部下たちもそれぞれ発音の違いで性格・出身クラスわけてたよね。セリーナは薬剤師ってことで教育を受けたきちっとしたしゃべり方だし、知的。彼女は強い。後ろを見ないし、決断力、行動力、冷静さ、判断力、すべて一級(笑)。


ise: 日本では2つの結末が上映されたんだけど、ジムが死ぬか助かるか、の違いだけで、女2人が生き残ることには変わりない。


Jas: 結局女が生き残るのね(笑)。


ise: 少佐が言うように、女は未来だからさ(笑)。ま、男がいないと未来もないわけだけど…。ということは、どの道、未来はないということか(笑)?
映画の中では「rage」に対する治療法もメカニズムもわからないままだったんだけど、治療法あると思う?



Jas: I don't know.
Up
HOME_English Update Feedback Contact Home_Japanese