スティーヴン・ドローズは常にハイパーな人だ。どこからともなくサウンドが流れてくると、それを瞬時にキャッチして、膝でそのサウンドを叩き、リズムに合わせる。そうかと思えば、ビールをぐいっと飲んで、ご機嫌になっているのだが…。 そんな彼を横目で見ていると、彼が持つ五感はきっと、サウンドを生(き)のまま、ストレートに包み込んでしまうのだろうと思った。 無論、ミュージシャンという輩は、そういった感性を持ち得てこそ、ミュージシャンなのだろう。が、スティーヴン・ドローズのそれは卓越している。そのミュージシャンシップに、一種、畏怖の念を抱きながら、私は常にインスパイアされるのだ。 彼のクリエイターとしての才能は、フレーミング・リップスのミュージック・バリエーションを無限大に広げ、音楽的にも、固定した一つの場所にとどまらないでいる。無論それは、彼がインタビューでも言うように、ウェイン・コイン、マイケル・アイヴァンス、デイヴ・フリドマンとのビッグ・コンビネーションなるものが、パーフェクトに相互作用している結果でもあろう。それぞれが独創性に溢れているのは言うまでもないが、何よりもこのバンドは、自由にサウンドと戯れる喜びを知っているのだ。だからこそ常に前進し続けている。スティーヴンとのインタビューで、この事実をまた再確認することが出来た。 今回、スティーヴンとはショート・インタビューであるが、ニュー・アルバムについて興味深い話しを聞くことが出来た。彼の言う“ニュー・サウンド”の真髄を、リリース前の今、少しでも多くの人に感じ取って頂けたら幸いである。 |
● 夏には待望のニュー・アルバム『』がリリースされますが、そのアルバムから、私たちは何を期待出来るでしょうか? 俺はとても(このアルバムがリリースされることに)エキサイトしているんだ!それはとても新しくて、そう、新しいサウンドで、俺たちにとって新しい何かだ。(前作と比較して)より洗練されたとは言いたくないけど…。分かんないなぁ。(笑)とにかく新しいサウンドだとしか言いようがない!『The Soft Bulletin』が完成した時、それはそれで、とても新しいものに感じた。今、それを聴き返しても、それは素晴らしい作品だけど、もう過去のものであるんだ。でもニュー・アルバムは俺にとって、本当の意味で新しい音楽だと言えるよ。 ●あなたはこのアルバムで、これまでとは違った、何か新しいことにトライしたかったわけですね。 ああ。新しいサウンドを新しいやり方でトライした。俺たちはそのことに関して、常に熱心に取り組んでいるよ。だからフレーミング・リップスが好きな人は、ニュー・アルバムも気に入ってくれることを願っている。それと俺たちの音楽を今まで聴いたことが無かった人たち、彼たちにも気に入って貰えたら嬉しい。 ● スティーヴン、あなたは「に興味がある」と言っていましたが、その要素が散りばめられた曲がアルバムにはあります。 うん、そうだね。『The Soft Bulletin』を制作する以前からずっと、そういったミュージックは聴いていたんだけど、自分たちのミュージックには取り入れたり、トライしたりすることはしなかった。でも今は「ヘイ!このサウンドはとってもクールだよ!俺たちもトライしてみようぜ!」そんな感じさ。それで俺たちは今回、トライしたんだ。『The Soft Bulletin』を制作する以前からずっと、俺たちはエレクトロニック・ミュージックを聴いていた。でも明らかに、俺たちはいろいろなことにトライしているし、ニュー・アルバムではより一層、そうだと言える。あらゆるものをミックスさせて、新しいサウンドを作ろうとトライした。 ● アルバム収録曲の中には「えっ?これがフレーミング・リップス?」と驚く人もいるでしょうね!もし『The Soft Bulletin』が好きな人でしたら…。良い意味でですが! (笑)えーっと、『The Soft Bulletin』がリリースされたのはいつだっけ、19… ● 1999年です…。 そう、1999年。そして今は2002年。もう3年という月日が経っているんだよ…。 ● はい、人々は変わったかもしれません。 うん。ともかく俺たちは、それぞれのアルバムごとに変化することを心がけているから。 ● ニュー・アルバムでは、どの曲をあなたが書いたのですか? 今回、曲作りは今まで以上に一緒にしたよ。 ● あなたとウェインでですか? うん。ウェインがドラムマシーンから、あるドラムビートを聴いて「このサウンドをチェックしてみてくれ。どう思う?」と言うとする。すると俺は「じゃあこのコードでトライしてみよう!」と返す。すると彼は「ワオッ!これはクールだよ!」って。(笑)俺はメロディーをいじるんだ。そしてウェインが歌詞を書く。曲によってはウェインがギターをプレイして、俺が「このパートにはこれを加えたほうがいいぜ」とアドバイスするよ。そういった意味で、今回は今まで以上に、一緒に曲を書いた。とにかくまぁ、俺たちはいつもそうやって曲を作っているけどさ。でも曲によっては、俺がメロディーを書いて、ウェインがそこに言葉をのせるんだ。例えば『One More Robots』、これはバラード調のサウンドで、俺が書いた。もちろん、歌詞はウェインだよ。(笑)そこにデイヴ(フリドマン)が、ストレンジなドラムビートを加えたんだ。分かるだろ、この全てがビッグ・コンビネーションなんだ。 たいていは、家でリラックスしながら曲の構想を練るけど、いったんレコーディングがスタートしたら、皆がそれぞれのアイデアを持ち込むんだ。曲作りに関しては、前作とたいして違いはないよ。でも、歌詞に関しては未だにトライしてないなぁ…。(笑)俺のメイン・パートはメロディーだから。こうやって歌ってさ。(スティーヴン、ハミングする)何せ、ウェインは歌詞のアイデアが豊富にあるからね! ● (笑)前から言っていますが、そんなことを言わずに歌詞にもトライしてみて下さい!あなただって、色々とアイデアがあるはずですよ!さて、あなたが持つ、ニュー・アルバムのとはどんなものですか?先程、70年代バラード調云々とおっしゃっていましたが…。 それは『One More Robots』のみに関してのことだよ。これは70年代のバラード調でトライしたんだ。そういったビートにしたのさ。この曲のロボットは、70年代って感じはしないけど…。(笑)俺はいつも、こういったバラード調のメロディーを書くことにトライしているんだ。例えば誰だって、キャッチーなポップ・ソングを書いてみたいって思うだろ?そこにオーケストラや摩訶不思議なキーボードを加えたら、それこそ面白いじゃないか! ● その感性があなたらしいです…。では、どの曲があなたのお気に入りですか? 俺は『One More Robots』が気に入っている。それから『Ego Tripping At The Gates Of Hell』『Yoshimi Battles The Pink Robots PartT』『It's Summertime』も好きだよ。とにかくどの曲も好きなんだ!(笑)でも一番のお気に入りは、やはり『One More Robots』だ。 ● 『Yoshimi Battles The Pink Robots PartT』を何故、日本語で歌おうと思ったのですか? 人々が興味を持つだろうと思ってね!俺たちはとても日本が好きだし、日本のラジオ番組(ここで一つ思ったのは、アメリカやイギリスはラジオの存在は非常に高いこと。それもオルタナティヴやインディーを中心にプレイするラジオ局が多々ある。また、大学内でもラジオ局があり、カレッジ・チャートは重要な地位を占めている)でプレイしてくれるかもしれないだろ?(笑)たぶん、きっと…。 ● (笑)では、誰のアイデアですか?ウェイン?スティーヴン?それともマイケル? 思い出せない…。たぶん、それはデイヴのアイデアじゃないかな…。 ● えっ、思い出せないのですか!(笑) (笑)そう、それはデイヴのアイデアだ!当時、デイヴはスタジオでナンバーガールと仕事をしていて、このアイデアが浮かんだはずだよ。「この曲は“ヨシミ”についてだし、日本語でも歌って欲しいなぁ。日本語で歌ったら、とっても愉快じゃない?」みたいなことを言ったんだ…。 ● 日本語で歌うのって、何だかストレンジではありませんでしたか? (笑)うん。でも俺はハーモニー・パートだけだから。(と言って、そのパートを歌うスティーヴン)でもウェインは集中しなければならなかったし、とても難しかったと思う。ずっと日本語を見ながら、それはもう、真剣に言葉を目で追っていたよ(笑)。 |
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